内向き志向のリアル 日本人留学生が減っている現実とは

June 25, 2016

日本は「内向き志向」と言われて久しい。果たして、日本人留学生は増えているのか減っているのか、今まで日本およびアメリカにおいて1,000名以上の留学に関わってきた筆者が、海外留学の実態に迫りたい。

 

 

留学者数の推移

 

2014年度の日本人海外留学生は独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)によると、81,219人(前年比16.2%)。日本から海外への留学者数の推移を見てみると、実はここ数年で大幅に伸びているのだ。

 

 

出典:平成28年3月 文部科学省集計 日本人の海外留学状況

「ユネスコ統計局,OECD,IIE等における統計,並びに(独)日本学生支援機構の調査による日本人の海外留学者数の推移」<別紙1>

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/__icsFiles/afieldfile/2016/04/08/1345878_1.pdf

 

では、なぜ内向きだと思われているのか?

 

 

統計データの違い

海外留学生数の推移を見る場合、OECD(「Education at a Glance」)およびユネスコの統計と日本学生支援機構(JASSO)の調査データの2種類がある。2009年にJASSOの調査が開始するまでは、一般的にOECDおよびユネスコの統計を元に留学生の推移をみていた経緯があり、2004年の82,945人をピークに2011年まで減少傾向であった。内向きの根拠とされる日本人留学生の減少はこれを元データとしていることが多かったのである。ただ、2013年度より集計方法が変わったため、過去のデータとの比較が難しくなっている現状がある。

 

一方、JASSOは『協定等に基づく日本人学生留学状況調査結果』の中で、対象を「短期の交換留学等も含む」としている。この調査によると2009年度以降、毎年大幅に伸びていることがわかる。またここでは、「留学期間別留学者数」に注目したい。

 

 

グラフ:留学期間別留学者数(2014年度) <別紙2>

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/__icsFiles/afieldfile/2016/04/08/1345878_1.pdf

 

実は、2014年度の留学者数81,219人のうち、半数以上の48,853人が留学期間1ヶ月未満なのである。短期の留学生が増加している理由は何だろうか?

 

原因の一つとして、就職活動の開始時期の変更により、大学の協定校への長期の交換留学に参加しにくい現状がある。交換留学は大学によって違いはあるが、秋学期(8-10月開始)からの1年間というところが多い。就職活動の選考時期と重なる恐れもあるため、学生も慎重になっているのだ。その分増えているのが、短期留学や海外インターンシップ、海外ボランティアである。グローバル人材として、よりタフで実践力の高い学生を求める会社側のニーズに応えるべく、留学のスタイルも多様化してきている。

 

またスーパーグローバル大学を中心に大学側も国際競争力を強化すべく、多国籍な協定校に加え、より実践的な海外研修にシフトしてきている現状もある。

(文部科学省 スーパーグローバル大学創成支援)

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/sekaitenkai/1360288.htm

 

筆者も海外インターンシップを中心に大学でのグローバル人材教育に携わってきたが、年々希望者が増加して2010年東日本大震災の年あたりからトップ大学の大学生を中心に若者の意識が変わってきたように感じる。就業経験や国際協力など、より自分らしい留学形態を模索している印象を受ける。

 

 

国別の留学生推移

 

次に国別の留学生数の割合を見てみると、やはりアメリカが18,769人と圧倒的に多い。アメリカ留学は本当に増えているのだろうか?

最新のデータをもとに分析したい。

 

アメリカの大学における留学生の動向(2014-15年)

日本人留学生総数 19,064人(前年比1.4%減、全米の留学生総数の2.0%、国別では第8位)

出典:Open Doors 2015, IIE (Institute of International Education)

 

日本人留学生は1994-97年度まで国別では第1 位を占めていましたが、中国やインドからの留学生数が急激に増えた結果、1998-99年度国別順位第2位、2000年度第3位、2001-07年度第4位、2008年度第5位、 2009年度第6位、2010-13年度は第7位、2014年度は第8位へと下降しました。

[ 日本人留学生数の変遷 1954-2014(出典:Open Doors, IIE、日米教育委員会まとめ)より]

 

やはり、アメリカの大学・大学院への留学は減っている。ハーバード・ビジネススクールから日本人が消えてしまったという話は象徴的だが、アメリカMBA全盛の時代からの変化もありそうだ。近年は慶應や早稲田といった日本のトップスクールでもMBAコースを開講したり、より短期間でコースを修了出来る欧州やアジアの大学の選択肢があるためコスパも考えて多様化していることが考えられる。また学位レベルの構成比は次のようになっており、non-degree(学位を取得しない)で留学する学生が約3割と高いことがわかる。

学位レベル 大学学部:46.6%、大学院:17.3%、Non-Degree(学位を取得しない): 29.4%、OPT:6.7%

出典:Open Doors 2015, IIE (Institute of International Education)

 

 

増加しているアジア留学

 

アメリカ留学の構成比が減少傾向なのに対し、ここ数年伸びてきているのが、アジアへの留学だ。特に台湾(前年度比43.0%)やタイ(前年度比22.5%)は人気がある。

人気の理由として、中国語の習得がビジネスシーンでも求められている現状がある。国内の大手商社でもHSK(中国語検定試験)を社員に求めるところも出てきており、台湾や中国、シンガポールの中国語圏のニーズが高まってきている。また前述のタイやシンガポール、マレーシアといったASEAN諸国への留学もコスパや治安の良さ、教育水準の高まりから増加傾向にある。特にシンガポールは「世界の大学ランキング2015-2016」(Times Higher Education)でもシンガポール国立大学(NUS)が26位と43位の東京大学を抜いてアジア1位になっており、英語と中国語の双方を学べるということからも特に人気が高まってきている。

 

 

まとめ

 

トータルの人数ベースでは伸びてきているため、「内向き」どころか、海外への関心は年々高まっているといえる。ただ、アメリカ一極化の時代から多様性が増しているのが、最新の留学動向といえる。

今の大学生は忙しい。就職活動とグローバルという双方を成功させるためには、「内向き」(就職活動や企業インターンシップ)と「外向き」(海外留学)の両立を目指さなくてはいけない事情が生じているのだ。

 

"JOY OF WORK"

Ryugaku Sommelier

 

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